1. 朝の「異音」は、体からのアラート
23歳でこの業界に入った頃、体は「無敵」だと思っていました。 残業で1000本のノック(曲げ)をこなしても、深夜まで飲んでも、翌朝にはケロッとして現場に立てた。腰が痛いという先輩を見ては、「準備運動が足りないんじゃないっすか?」なんて生意気なことを言っていたものです。
ところが43歳になった今、俺の朝は「バキバキッ」という関節の音で始まります。 布団から起き上がる瞬間、腰に走る嫌な重み。膝を曲げた時に鳴る、乾いた音。 20年、数トンの圧力を操り、何千枚、何万枚という鋼板を支え続けてきた代償は、確実に体に蓄積しています。
「あぁ、今日もどこか調子が悪いな」 そう思いながら仕事に行くのが当たり前。でも、プロの職人として、その「ガタ」を放置して現場に出るわけにはいきません。
2. 「風呂」は洗浄ではなく、筋肉の「熱処理」だ
現場を終えて帰宅し、真っ先にやるべきメンテナンス。それは「お風呂」です。 ただ油汚れを落とすためだけに入るのではありません。俺にとっての入浴は、凝り固まった筋肉というパーツをほぐすための「熱処理」です。
- 炭酸入浴剤の導入: 40歳を過ぎてから、ドラッグストアで少し高めの炭酸入浴剤を買うようになりました。これが馬鹿にできません。お湯に溶け込んだ炭酸が血行を促進し、パンパンに張ったふくらはぎのダルさを「リセット」してくれます。
- 「交互浴」で血管の掃除: 熱い湯船と、冷たいシャワーを交互に浴びる。これで血管を収縮・拡張させ、溜まった乳酸(疲労物質)を強制的に流し出します。これをやるのとやらないのとでは、翌朝の「指先の感度」が全く違います。
3. 「ストレッチ」は、精度の狂いを直す「キャリブレーション」
ベンダーの前に立つ時、俺たちの体は常に「一定の姿勢」を強いられます。 前傾姿勢で板を支え、ペダルを踏み、0.1ミリのズレを注視する。この動作を繰り返すと、体の軸が必ずどこかで「歪んで」きます。
寝る前の5分間、俺は自分の体を「校正(キャリブレーション)」します。
- 肩甲骨剥がし: 腕を振り回すのではなく、肩甲骨を意識して大きく回す。これで、鉄板を支える時に固まった背中を解放します。
- 股関節の柔軟: 立ち仕事の職人にとって、腰痛の原因の多くは「股関節の硬さ」にあります。ここを伸ばすことで、腰への負担を逃がす「逃げ道」を作るのです。
「面倒くさい」と思うこともあります。でも、これをサボると翌日の仕事の精度が落ち、結果として自分が苦労することを知っているからこそ、欠かせないルーティンです。
4. 43歳が投資すべきは「安全靴」と「枕」
「お金はどこに使うべきか」 43歳、娘たちの学費という巨大な出費が控えている俺たちにとって、これは切実な問題です。 でも、俺は断言します。職人が一番にお金をかけるべきは、「安全靴」と「枕」です。
- 足元を固める: 1日1万歩以上、硬いコンクリートの上を歩き、重い荷物を支える俺たちにとって、安全靴は「基礎」です。クッション性の高い、少し良い靴に変えるだけで、夕方の腰の痛みが劇的に軽減されます。
- 眠りをデザインする: 夜、どれだけ深く眠れるか。それが翌日の集中力を決めます。1万円以上する「自分に合った枕」に変えた時、俺は初めて「朝、スッキリ起きられる」という感覚を知りました。これは贅沢ではなく、戦い続けるための「設備投資」です。
5. 「痛い」は弱音ではなく、体からの「警告音」
若い頃は、痛みを根性でねじ伏せるのが美徳だと思っていました。 でも、今は違います。 「腰がピリッとするな」と思ったら、すぐにサポーターを巻く。 「目が霞むな」と思ったら、迷わず目薬をさす。 これは弱くなったからではありません。「プロとして、戦線離脱しないための責任感」です。
俺が倒れれば、工場のラインが止まる。 俺が倒れれば、娘たちの笑顔が消える。 その重みを知っているからこそ、自分の体を誰よりも大切に、丁寧に扱う。それが、43歳になった俺たちに求められる「プロの矜持」ではないでしょうか。
最後に:ブログと肉体、二つの現場
今、俺はこうしてブログを書いています。 キーボードを叩く指先も、長時間椅子に座る腰も、やはり現場とは違う疲れ方を感じます。
鉄を曲げるのも、文章を書くのも、結局は「健康な体」があってこそ。 今夜はいつもより少しだけ長く湯船に浸かり、自分の足を労ってあげてください。
俺たちの体は、まだあと20年、現役で戦わなきゃいけない「特注の重機」なんですから。

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